一気に国民的人気作へ
吾峠呼世晴原作、2016年に週間少年ジャンプで連載開始以降、根強いファンを獲得し、2019年テレビアニメが放送されると、さらに広く認知され、評判が評判を呼び、次第に今の社会現象ともいうべき作品となった。
10月16日に公開された〈劇場版 鬼滅の刃 無限列車編〉はOP興収歴代一位。
最速で100億円を突破し、いずれあの「千と千尋の神隠し」を超えるのも時間の問題かも知れない。
近年のヒット作の共通点
鬼滅の刃並びに、進撃の巨人、約束のネバーランド等々、近年のヒット作に共通していえる事は、主人公たちの住む世界がとても辛い状況に立たされているということ。
どれもダークなファンタジーのエッセンスが強い。それは現代に生きる読者が物語の世界同様、非常に息苦しい思いを抱えているからだろう。
しかしそれよりもさらに大事なポイント。それはどの作品も勧善懲悪ではないということだ。特に鬼滅の刃はその最たるものと言える。
勧善懲悪
鬼も元は同じ人間であり、鬼にも悲しい過去がある。主人公の炭治郎は鬼を斬った後、敵である鬼に思いを馳せる。
アニメ第五話の主人公のある行動は、「この作品は、悪を征する正義のヒーローのような勧善懲悪モノではありません」と示すメッセージだった。
時代が求めていたのはまさにこういう作品だった。
インターネットが広がり、グローバル化が進んだ。遠い国の見知らぬ人と簡単に交流でき、友達だってつくれる。
以前よりも膨大な量の情報が世界を駆け巡る。それにより他国の掲げる正義、外国の状況、実態、それらすべてを、多くの一般市民が知れるようになった。
そして争いが減った。
情報が入るからこそ、自国の掲げる正義と他国の掲げる正義は全く異なるのが当たり前と知っている。一般人レベルで、自分と相手の考えが違うのが、当たり前だという認識が圧倒的に根付いた。
それにより現代に生きる我々は、単に正義が悪を懲らしめる物語では納得できない。
なぜなら悪にも悪の貫く正義があるのだから。
この世界と鬼滅の刃の世界はとても似ていて、どこかリンクする。
フィクションであり、ファンタジーだからこそ、勧善懲悪ではない要素に我々は虜になり、感情移入してしまう。
鬼滅以後
鬼滅の刃がヒットするということは、この世界がとても複雑化していて、相手のカタチと自分のカタチの違いを無意識に感じ取り、尊重している人が多いから。
鬼滅のヒットにより、これからのファンタジー作品は、より善悪の描き方に特徴のある作品が軒並み増えていくはずだ。
勧善懲悪の代表である子ども向けの色々な作品でさえも、変化が訪れるに違いない。
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